高齢者の健康状態と抜歯のリスクとは?

最近では高齢化社会に伴い、生活の質を上げて健康寿命を長くしたいと考える方が多くなってきました。
食事は毎食行うものなので、歯を残してしっかりと噛む事が出来る様にと、望んでいる患者さんは少なくありません。

ただ歯周病になって痛みや腫れを伴ってしまうと、歯を残していても苦痛を感じて抜きたいと希望する方もいます。

状況によってはその選択をする場合もありますが、高齢の方では抜歯のリスクを伴う事もあります。

高齢者の方の健康状態や抜歯のリスクについて詳しくご説明します。

【全身状態】

・持病の薬の作用

高齢者になってくると色々な持病の症状が出てきます。
がん、心臓病、脳卒中は3大成人病と言われますが、心臓病と脳卒中は抜歯に関して注意が必要です。

心筋梗塞や脳卒中の疾患がある方は高血圧を予防する為に血液をサラサラにするお薬を服薬している事が多いです。

これらの薬を飲んでいると、症状によっては血が止まりにくくなり、抜歯の後の治癒が遅れてしまう事があります。

薬の種類や強さによって症状も変わりますし、薬が効きやすい体質の人とそうでない人もいるので、同じ薬を飲んでいても、出血が少ない人もいれば出血が多くなる方もいます。

また歯周病がかなり進行していて骨の状態が少なく、ほとんど骨とついていない、ぐらぐらの状態では、出血が少なく抜歯する事が出来るので安心してください。
逆にしっかりと骨についていると、出血が多い事が予想されるので、

抜歯の予定があって薬を服薬している場合には、かかりつけの内科の先生と相談してから治療する必要があります。

以前は投薬を数日間止めてから抜歯する事が多かったのですが、症状により、投薬を止めないで、止血をしっかりするなどの処置をしながら治療する事もあります。

この様に持病で薬を飲んでいる場合には、内科の先生との連携が必要な場合があります。

・お口の状態

高齢になってくると免疫の機能も低下してくるので、抜歯した後の治療後の状態が良くない事があります。
また、若い人に比べて傷の治りが遅く、骨も硬くなっている為抜きにくい傾向にあります。

【抜歯を希望する場合】

・歯周病による痛み

歯周病が進行してくると腫れや痛みを伴って違和感を生じてきます。
そしてだんだんひどくなってくると、グラグラしてしまって、噛む事も難しくなってしまいます。

そうなった場合に、痛みもひどいし、抜いて楽になった方が良いと考える患者さんもいらっしゃいます。

ただ、大人の歯は1度抜いてしまったら、もう生えてくる事はありませんし、歯が無くなってしまう事で骨が痩せてしまう原因にもなってしまいます。

できるだけ歯を残した状態で歯周病の治療をしていく事もありますが、痛みがかなり強く、もう残す事が難しいと判断された場合には抜歯を選択する事もあります。

・部分入れ歯の不具合

歯周病が進んで歯を失った場合、残っている歯も歯周病でグラグラしてきている事があります。
部分入れ歯は、歯を失った所を補う為に『ばね』をかけて維持するのですが、他の歯に安定感が無いと歯ぐきを痛めてしまったり、残っている歯に痛みが出てしまったりします。

不具合が無い様に歯科医院で調整していきますが、固定式では無い為、安定感も少なく食事の際の違和感はあります。

ただでさえ固定されている歯から、取り外し式の入れ歯になってしまって『ばね』をかける歯の歯周病によって、よりストレスを感じてしまう事も少なくありません
そうなると痛みが出る歯を抜いた方が良いのではないかと思う患者さんもいらっしゃいますが、残っている歯の歯周病の治療をしていったり、部分入れ歯の調整をする事で改善する事もあります。

また部分入れ歯の調子が悪い場合には、インプラントという選択肢も出てきます。
その場合には骨の状態が良いうちに治療する事が望ましいので、歯が無い期間は骨に刺激が伝わらず、骨が痩せる原因になってしまうので、早めの治療が理想的です。

【抜歯リスクに対する対策】

心筋梗塞や脳梗塞を持病に持っている患者さんの場合には気候などにも注意が必要です。

これらは血管が詰まって起こる病気です。
そして、血液が固まる能力の事を血小板凝集能と言い、この値は午前中に高くなり午後から低い値になる傾向にあります。

つまり午前中は血が固まりやすいのです。
この為、冬場の午前中は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなると言えます。

その為、抜歯をする際には、お昼の食事をして落ち着いた時間帯に行うのが望ましいと言えます。

特に冬場の早い時間は気温差などで通院時の負担もあるので、その辺も考慮して午後からがおススメです。

麻酔がきれるまで2~3時間程度は食事を避けた方が良いので、夕食の時間にかからない時間もおススメです。

高齢者の方の抜歯は事前に持病が無いか、投薬は無いかを確認して、体に負担が無い様な状態で行う事が抜歯に対するリスクを軽減してくれます。

どうしても歯を残す事が難しくなってしまった場合には色々な配慮が必要と言えます。

また出来るだけ歯を残してあげる様にお口の環境を整えてあげる事も大切でしょう。